文化発表会 学校長 挨拶(10月30日(金))
入力日
2020年11月4日
内容
「Remember~記憶に残る文化発表会にしよう~」というテーマで、いよいよ皆さんたちの手による一大イベントが始まります。これまで短い期間ではありましたが、練習や準備、ご苦労様でした。
そこで、この発表会に先立ち、私からのはなむけとして「文化」ということについての話をしたいと思います。
少し前の話になりますが、国語の教科書に正高信男(まさたかのぶお)の「文化とは何か」という文章が載っていました。
内容は、宮崎県にある幸島(こうじま)のサルの話です。有名な話なので、もしかすると聞いたことのある人がいるかもしれません。
宮崎県の幸島は、周囲わずか4キロの小さな島です。亜熱帯の原生林に覆われた美しい見事な森の島です。そこに住むニホンザルは「芋を洗って食べる」という文化をもっているということで、世界的に有名です。皆さん、知っていましたか。
昭和28年(1953年)、今から67年前、1歳半のメスのサルが、砂浜に投げられたサツマイモを、山から流れてくる小さな川の水で洗って食べました。
この「イモを洗って食べる」という行為は、次第に兄弟や仲間にも伝わり、やがて子孫にも伝承されていきました。
そうこうするうちに、この「イモを洗う」という行為も少しずつ変化していきました。
初めは、川の水を使って、一方の手に持ったイモを、もう一方の手でごしごしこすって食べていました。
しかし、やがて、そのようなある意味無駄なやり方をやめ、まず、海水で簡単に洗い、ひとかじりしては、また海水につけて食べるという方法を考え付いたのです。
つまり、彼らは「洗って食べる」だけではなくて、「塩味をつけて食べる」という方法を編み出したのです。
ところで、この「イモを洗う」という行為によって、海水に親しむようになった後も、サルたちは、全く海には入りませんでした。
ところが、ある日、2歳になるこれもメス猿が、海にまかれた餌を拾うために、勇敢にも海の中へ飛び込んだのです。
それを見た他のサルたちも、そのメス猿に続けとばかり、餌を拾うために海へ入るようになりました。
そのうちに若いサルたちは、海に入ること自体の面白さを発見しました。
殊に、夏の日盛りに海に入ると、涼しくて気持ちがいいことを知り、今度は岩からダイビングする、スリリングな遊びも覚えました。
そして泳ぐだけではなく、潜ることも覚え、時には、海底から藻(も)をつかんで取ってくるようにもなりました。
海という未知の世界に飛び込むのは、冒険でしたが、それを乗り越えたために、彼らの生活に「広がり」と「豊かさ」を与えてくれたのです。
しかしながら、年寄りのサルたちは、決して海の中へ入ろうとしませんでした。彼らは、保守的で、もはや未知の世界へ挑戦する「勇気」を失っていたのです。
このようなサルたちの世界は、人間の世界にもあてはまります。
つまり、新しい行動を開発するのは、もっぱら少年・少女期の若い世代です。また、建設的で創造的な行為を始めるのは、むしろ、「強い」立場の者より、「弱い」立場の者だということです。
さて、これから文化発表会がはじまります。皆さんの若い感性にあふれた「新しい」、そして「創造的」で「建設的」なパフォーマンスを楽しみにしています。
各クラス、これまで一致団結して、練習し、準備してきたことでしょう。一人ひとりが力を出し合って作り上げることにこそ、この発表会の意味があります。
コロナ時代「初」の文化発表会です。みなさんが、本気になって、全力を出し切って、「記憶に残る」文化発表会をみんなで作り上げてくれることをお願いして開会のあいさつとします。
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