令和5年度 校内研究
令和5年度 校内研究全体計画
2023/7/27修正提案
金立小学校教育の質的改善
~深い学びに向かう児童の育成をめざして~
1 主題設定の趣旨
令和2年度(2020年度),小学校で新学習指導要領が全面実施となって3年が経過した。また,令和3年1月には「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(答申)において,学習指導要領の趣旨を実現に向けて「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させていくということが強く打ち出されたところである。子どもたちが「何をどのように学び,何ができるようになるか」と言ったような視点に立ち,新しい時代に求められる資質・能力を育むための教育活動をさらに充実させていくことが求められているのである。
全ての教科・領域において「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性等」という3つの柱で整理された資質・能力を育成するために,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が必須であり,また,手立てとしてのICT活用をより推進するなどしながら,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図ることが重要となる。そのためには,まず教師自身が自らの授業や指導としっかりと向き合い,「主体的・対話的で深い学び」の視点で普段の授業を不断に見直し,必要に応じて改善を図ることが不可欠であると考える。
このような中,令和4年度までの本校の校内研究を振り返ると,「めざす児童のすがた」を明確にもち,教師間で共有してきたことは,一つの成果であるといえる。また「深い学びに向かう児童」を育成していくための授業づくりを研究の主題に据え,「授業づくりチェックシート」を活用し授業改善に取り組んできた。研究授業では,問題解決型の授業展開を中心に行い,学年グループで学習指導案を練り合い,授業後は成果と課題について全体で協議するというスタイルで行ってきた。このような校内研究において得られる成果も多くあったと思うが,一方で個々の教師の日々の授業改善にはあまり結び付いていなかったのではないかという反省もある。例えば,「提案授業を行うことは勉強になるが,そのことと普段の授業がなかなか結び付いていなかった」「算数科以外での教科では授業づくりチェックシートを活用できなかった」といったような声があり,時間をかけて取り組んできた校内研究が日常の授業実践にはあまりつながっていなかったのではないかと推察する。また本校の教師の年齢構成は経験豊富なベテラン教師と新規採用間もない若手の教師が多く,ミドル層が極めて少ない。当然,ベテラン教師と若手教師では解決すべき自らの課題も目指す目標も大きく異なっていると考えられる。
そこで,真に価値ある校内研究をするため,本校ではこれまでの研究授業に重きを置いた校内研究から「課題解決型」の校内研究へと大きく転換を図っていこうと考える。それは,個々の教師がそれぞれに自らの「課題」を解決するために「実践」を行い,その営みを校内で「共有」していくという研究である。ベテラン教師も若手教師もそれぞれに自らの「課題」を解決していくために,「提案授業」といった非日常ではなく,普段の授業や取組を不断に見直し,その質的改善を図っていくことにほかならない。「質的改善」とは,これまで取り組んできたことに対して「それは何のために行っているのか」「そのことで子どもにどのような力が付くのか」「果たして本当に力は付いているのか」といったような視点で見直しを図り,本当に意味のある取組としていくことである。また,課題解決のためには,教師自らが学ぶ意志や意欲をもち,自らを律しつつ,自己責任を果たしていく必要がある。つまり学習指導要領で求められている「主体的・対話的で深い学び」を,まずは教師自身が実践するという研究でもある。
以上のことを踏まえ,令和5年度の研究では,算数科での研究で積み上げてきたものをさらに幅広い教科で研究に取り組んでいくこととする。授業の本質的な部分はどの教科も共通していることから「授業づくりチェックシート」を活用することで,児童の主体性を喚起し,知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力の育成を図るために授業の質的改善に取り組む。
2 研究の目標
「授業づくりチェックシート」を基に,教師一人一人が自らの「強み」と「課題」を明らかにして,継続的に授業力向上を図ることで,児童が「主体的・対話的」に学ぶことできる授業を展開し,児童一人一人の「深い学び」の実現をめざす。
3 研究の内容
(1)「めざす児童のすがた」に向けた手立ての工夫と適時のチェック・見直し
(2)授業の質的改善~「授業づくりチェックシート」を基に,自らの課題を解決する授業づくり
(3)朝の時間の効果的な活用 ~個別最適な学びを保障するタブレットの活用
4 研究の方法
(1)学年に応じた「めざす児童のすがた」を明確にして,小グループ内及びグループ間で共有し,効果的な手立てを講じるとともに,適時にチェックを行い,必要に応じて見直しを図る。
(2)「授業づくりチェックシート」を活用した授業の質的改善について
・「授業づくりチェックシート」を基に,自らの「強み」「課題」を洗い出し,年間を通して取り組む課題を明らかにする。(ここでいう課題とは,改善したい点,よりレベルアップを図りたい点など)
・単元(題材)や本時の評価規準,課題解決のための手立てなどを記した「授業構想シート」(A4)を作成し,年間4回(1学期1回,2学期2回,3学期1回)の小グループ(またはペア)による授業公開を行う。(牛島先生は指導案を作成しての初任研の研究授業をもって代える)
・授業後はできるだけ間を置かず,小グループ(もしくはペア)で授業についての振り返りを行って記録し,日々の授業改善につなげる。
・「研究のまとめ」は年間を通して作成していく。年間4回の授業の記録はその都度,記録する。また,年度末に,年間を通した自らの課題解決の状況についての振り返り(A4で1ページ)を執筆する。これを全員分取りまとめて「研究のまとめ」とする。
【本取組の大まかな流れ】
【年度当初】
① 「授業づくりチェックシート」を基に,自らの「強み」「課題」を洗い出す。
② 自らの授業における課題,及びその改善の手立てについて個人で考え,小グループ内で情報交換を図ってブラッシュアップする。
③ 各自,授業を実施する教科,時期,単元(題材)などの計画を作成する。
(実施教科は4回中2回算数、残り2回は他教科でもよい。研究部で必要に応じて調整する。)
④ 全体研において,それぞれが取り組む課題や授業実施計画について公表し,全体で共有する。
【事 前】
・1週間前までに実施する校時,教科,単元などを研究主任と教務主任に伝える。
教務主任は小グループのメンバーが授業参観できるように調整を図る。
・課題改善の手立てを記した「授業構想シート」を作成し,2日前までに全教職員に配付する。
(さらに、所定の場所にデータ保管し,誰でも見ることができるようにしておく)
【本 時】
・参観するメンバーは,授業の妨げにならないように参観する。(勝手に指導したりしない)
また学年に応じて,参観者が来る旨とその理由を児童に説明し,普段通りの授業が行われるようにする。
・授業者,参観者(必要に応じて児童)は,授業後に評価シートを用いて簡単な評価を行い,記録しておく。
【事 後】
・授業者,観察者(必要に応じて児童)は,授業後にその授業についての評価を行う。
・評価結果を参考にしながら明らかになった相違点などを話題にするとよい。
・授業者は,振り返りを基に新たな課題を設定し,次回にむけて授業改善に努める。
小G研 実施実績 3月22日現在
【関連資料】
【校内研 講話資料】
●20230728校内研究プチ講話2_主体的・対話的で深い学び
【小グループ研究会の様子から】
研究のまとめ 完成しました。
はじめに
1年前、令和4年度の金立小学校の卒業式において、校長の式辞として、次のような話をしました。
私が若い頃に影響を受けた心理学者の1人に佐伯 胖(さえき ゆたか)という人がいます。佐伯 胖 先生は、「学び」=「勉強」+「遊び」 という関係性を思いつかれたそうです。このことは、私自身が、長年、教師として仕事をする上で、いつも大切にしてきたことです。「遊び」という言葉にはいろいろな意味がありますが、ここでは、「自分が好きなことや興味があることをして楽しい時間を過ごす」といったような意味になると思います。また、ここでの「勉強」とは「価値あること」となるかと思います。つまり、「学び」という言葉には、他の人に無理やりさせられるのではなく、「自分なりの楽しみや面白さを見つけて、価値あることにわくわくしながら取り組む」という意味があるのだと思います。私たち教師も、皆さんの日々の学習が「学び」になるように、もっともっと授業の在り方や進め方を工夫していかないといけないなあと思っています。
「学び」=「勉強」+「遊び」という考えは、とある冊子の中で取り上げられていた佐伯先生による講演か何かの内容であったかと記憶しています。「学び」という言葉は、多くの心理学者や教育学者などによって、様々に定義付けされていますが、私の中では、最も納得のいく定義であり、実際、自分自身もこれまでに関わってきた多くの仕事を、「遊び」のように無我夢中で取り組んだり、常に「楽しむスタンス」を忘れずに取り組んできたりしていたように思います。
子どもたちにとっても、学校での営みが、「勉強」や「学習」だけではなく、ぜひ、この「学び」になってほしいということは、私自身の長年の思いでありました。現行の学習指導要領(平成29年告示)において、子どもたちが「何をどのように学び、何ができるようになるか」という視点で考える、「子どもを主語とした教育の在り方」の重要性が強く打ち出されましたが、学校での教育の現状はいかがでしょうか。私たち教師は、子どもたちの「学び」を実現するために、文部科学省がいうところの「主体的・対話的で深い学び」の視点で、普段の授業を不断に見直していくことが求められていると思うのです。
令和5年度から本校で取り組んできた校内研究は、これまでの研究スタイルとは一線を画し、とても自由度が高く、教師自身の主体性が試されているような進め方となっています。もちろん、(特に小学校では)これまでの校内研究の進め方がよくなかったということではなく、それなりに一定の成果も上げてきたと思っています。しかしながら、これからは、ベテランも若手もそれぞれに、個々の教師が自らの課題を設定し、その課題を解決するために、自らのペースで年間を通して、課題解決に取り組んでいくといった営みを校内研究として位置付けてみることにしました。この方法が本当によいのかどうかは正直分からないところもありますが、教師自身がそれぞれに自らの課題解決のために「主体的・対話的で深い学び」を実現していくという点においては、大変よい方法ではないかと思っています。
教師は、まずは「教え上手」であってほしいと思いますが、やがて、「教え上手」から「学ばせ上手」へと成長してほしいし、常にその成長を止めないでほしいとも思っています。また、「・・・せねばならない」思考の「させられ感」による研究ではなく、少しでも「やりたい」「やってみたい」という気持ちを前面に出して「わくわくしながら」また「楽しみながら」取り組む研究でありたいという願いがあります。その上で、1人1人の研究の質も高まればいうことはありません。まだまだ、志半ばではありますが、金立小学校の素晴らしい先生方一人一人の初年度の取組をぜひご覧いただければ幸いです。
令和6年3月26日
佐賀市立金立小学校 校長 副島 和久