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令和5年度公民的分野支部実践の分析
入力日
2024年1月23日
内容
佐賀県中社研
令和5年度公民的分野支部実践の分析
公民的分野部長 鶴 勝己
1 はじめに
これまでの課題として,以下の点が挙げられた。
(1)学びのSTEAM化=パフォーマンス課題
・生徒が切実感をもつことができる,学ぶ必然性を感じることができる課題の設定
・生徒たちが考えたくなるような問いの支部(学校)間での共有
(2)学びの個別最適化=『学び合い』の考え方を生かした授業
・アウトプットを充実させるために,「何をやったかではなく,何ができるようになったか」を生徒全員が自分で評価できる課題(めあて)の提示。また,ルーブリックの明確化
(3)新しい学習基盤づくり=学びのネットワークの拡張
・政策検討時間へのLPの参加。学びを社会に開くための手立ての検討
・有識者の意見に対して批判的に追及していくための教師のコーディネートしたがって,昨年度の課題や今年度の県中社研の研究方針をふまえ,各支部とも実践研究が行われた。そこで今年度の振り返りを行っていきたい。
2 今年度の実践と分析
(1)パフォーマンス課題の設定について
・「外国人居住者の現状と課題について理解し、外国人居住者が生活しやすいまちにするための取り組みを考えよう」
・「選挙に行くだけが政治参加じゃない!江北町をよりよくするために、グループで陳述書を作成しよう!」
・「憲法第9条(平和主義)は改正すべきか」
・「防犯(監視)カメラを前にプライバシーの権利をどこまで主張できるだろう」
・「現在の日本で三権分立はどれほど機能しているだろう」
・「嬉野市(鹿島市)の魅力や課題についてディスカッションしよう」
・「どのような取り組みをすれば,ワークライフバランスを実現できるか~男性の育児休業の取得率を向上させるにはどのような取り組みが必要か~」
・「裁判員制度で裁判員の一人として,判決を提案しよう」
現代社会において幾度となく議論の対象となっているものをパフォーマンス課題としている実践がいくつか見られた。一方で,学ぶ必然性はあるものの生徒の切実感がどこまであったのかと少し疑問符のつくものもあった。確かに,支部の意見交流会でもあったように,課題の設定は難しいかもしれない。よって,学校や支部の中で意見交流を積極的に行っていくことが大切になる。また,日ごろ目にする新聞やニュースには多くの教材(課題をつくる上でのヒント,キーワード,キーセンテンス)が載っている。「何か,課題にできるものはないだろうか」「これとこれを結び付ければ(工夫すれば),生徒の切実感に迫る課題になるのではないだろうか」といった教師自身の見方・考え方を発揮すれば,パフォーマンス課題につなげることができると感じる。
昨年度もお伝えしたように毎回,質の高いパフォーマンス課題の設定はできないかもしれないが,「これはしてみると面白いかも」といった意欲的な取組(チャレンジ)が,パフォーマンス課題の向上につながり,社会科の目指すべき生徒の育成につながっていくと考える。
(2)学びの個別最適化について
『学び合い』において「目的」「視点」「立場」を明確にし,集団が共通認識のもとで活動したり,ジャムボードを活用して,討論の内容を整理したりした。また,調べたことをGoogleのプレゼンテーションソフト(Slides)を使ってまとめ活動をするなど,様々な個別最適な学びが行われた。多くの学びの個別最適化を進めていくことで,生徒一人一人に応じた学びを保障していくことができていると感じた。
一方,個に応じた評価をどのようにしていくのかが課題として挙がった。
(3)LPの活用について
実際の裁判官をLPとして活用した実践があったが,裁判官との授業までの準備に関しては,時間がかかったとのことであった。また,LPによる評価については今後も課題として挙げられる。しかし,LPに評価していただくことで,社会とのつながりをより感じ,社会(地域・日本・世界)と教室を結ぶことにつながる。そして,生徒のみならずLP自身の新たな気づきや社会科学習への関心にもつながり,それが地域の財産になっていく。
(4)評価について
評価規準(ルーブリック)を用いた実践は多くはなかったが,ルーブリックの大切さはどの支部も感じていた。だからこそ,意見文の作成の場合といった生徒の意見を深めさせる(書かせる)場合は,ルーブリックを明確にしておく必要がある。ここが不十分だと,生徒自身の学習への取り組みも不十分なものになり,生徒の育成(伸び)も期待以上のものはないかもしれない。
3 おわりに
今年度はコロナが5類に移行され,以前と同じような研修会が各支部で行われた。また,活動を精選し,より意味のある活動へとなってきている。さまざまな研修会を実施していただいた地区・学校には心から感謝を申し上げたい。
令和5年度の九州中社研宮崎大会では,伊万里・西松浦地区が公民的分野での発表をしていただき,本当にありがたかった。重ね重ね感謝申し上げる。そして,令和6年度は佐賀県大会,令和9年度は全国大会となっており,全県下の先生方の協力が必要不可欠になってくる。
働き方改革や行事精選など,様々な状況がある中でも「今,できることをまずはしっかりと取り組む」を念頭に研究を進め,実践を重ねることにより,社会に開かれた公民学習の在り方を模索し,生徒の育成につなげていきたい。
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