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令和5年度歴史的分野実践の分析
入力日
2024年1月25日
内容
佐賀県中社研
令和5年度歴史的分野実践の分析
歴史的分野部長 中島浩太郎
1 はじめに
佐賀県中社研歴史的分野では,令和5年度も『社会に開かれた中学校社会科の学びをめざして』というテーマのもと研究を行った。研究の柱として,①学びのSTEAM化=パフォーマンス課題の設定 ②学びの個別最適化=『学び合い』の考えを活かした授業 ③新しい学習基盤づくり=学びのネットワークの拡張の3つを設定した。
地理的分野・公民的分野に比べ,現実の社会論争を取り上げにくいという歴史的分野の特性を踏まえ,学習する歴史的事象にはどのような背景や課題があり,その課題を克服するために,当時の政府(国家,権力者)や人々がどのような政策や努力を行ったのかについて,時代背景や当時を生きた人たちの立場・考えなどを考慮し,多面的・多角的に思考する授業を目指した。
知識を詰め込むだけの社会科授業を脱却し,主体的に考え判断する学習活動を行うことで,授業の内容が直接現代の社会論争と関わりがなくとも,様々な社会的事象について考え,主体的に社会に参画しようとする『公民としての資質・能力』の醸成を目指した。
2 今年度の実践と分析
〇分析の視点(各支部の実践を以下の4点について分析,考察していく。)
① パフォーマンス課題の設定について
② 学びの個別最適化について
③ LPの活用について
④ 評価方法について
(1)パフォーマンス課題の設定について
時代
支部
パフォーマンス課題
平安時代
藤津嬉野鹿島
武士はどのようにして歴史の表舞台に登場したのだろう?
平安~室町
神埼
武士政権の確立に最も貢献した人物は誰だろう?
鎌倉時代
神埼
承久の乱の際,御家人たちは幕府側,上皇側どちらにつくべきだったか?
江戸時代
藤津嬉野鹿島
徳川幕府はなぜ260年間も続いたのだろう?
江戸時代
佐賀
産業や文化が発達し,都市が繁栄する中で,なぜ幕府は改革をしなければならなかったのだろう?
近世
ヨーロッパ
鳥栖
近代革命によって,人類は幸せになったのだろうか?
明治~大正
藤津嬉野鹿島
倒幕からわずか40年で日本が列強の仲間入りを果たせたのはなぜだろう?
明治~大正
藤津嬉野鹿島
国際協調の歩みを見せた世界が,WWⅡを防げなかったのはなぜだろう?
昭和時代
藤津嬉野鹿島
敗戦国日本は,どのようにして国際社会に復帰したのだろう?
~成果と課題~
各支部で行われた授業実践の中で,単元を貫く問いやパフォーマンス課題を設定した実践が多く見られた。当時の時代背景から判断を迫るような問いを設定したものも多く,生徒が様々な視点から多面的・多角的に考察し,判断するものになっていた。
一方で各支部から,“パフォーマンス課題の設定が難しい”“地区内の先生方で取り組みに差があり,足並みがそろわない”という声も上がった。教科書から大きく飛躍したパフォーマンス課題や,特設の授業でパフォーマンス課題を設定するのは,教師にとって大きな負担となる。まずは難しく考えず,教科書の内容で扱えるパフォーマンス課題を設定したい。また,鳥栖市が実践しているように「1人1実践」を行い,その実践をもちよることや,佐賀市のように各先生方の実践をデータベース化することで,生徒だけではなく教師も「誰1人取り残さない」社会科授業の実践が行えると考える。
【学習形態の工夫】
・時間と話し合いの視点のみを設定した協働学習(学びの裁量を生徒へ)
~成果と課題~
成果として挙げられるのは,生徒に学びの裁量をあたえた『学び合い』の時間,協働の時間が増えたことである。生徒が『学び合い』の中でパフォーマンス課題に対する最適解を導き出すことができた事例が増えていた。12月に行われた幹事・研究部長研修会の際,『学び合い』中の教師の働きが話に上がった。『学び合い』を効果的に行うためにはファシリテーターとして教師の役割が重要であるという意見が出た。生徒に自身の考えを強化させるために「〇〇も同じような意見だった。」違った考えに気づかせるために「〇〇は正反対の考えだった。」などの声掛けを行っていた。また,生徒の発言の中から,課題を解く視点となるものを拾い上げ全体に共有したり,活動が停滞している生徒だけを集めて,アドバイスを行ったりという実践もあった。
(3)LPの活用について
【各支部によるLPの活用例】…・校内の他教科教員 ・保護者
~成果と課題~
今までのゲストティーチャーのような「教える-教えられる」の関係性ではなく,共に学ぶ協働の相手として意見を出し合うことで,深い学びにつながった事例が多かった。ほとんどが他教科の教員や保護者から意見をもらう実践だった。今後の課題としては,外部LPとのネットワーク拡大が挙げられる。
(4)評価方法について
本単元(7時間)の評価規準 知識・技能 思考・判断・表現 主体的に学習に
取組む態度
具体的な内容/
単元末の評価
〇社会の変動や欧米諸国の接近などを背景に江戸幕府の政治が行き詰まったことを理解している。
〇農業や産業の発展や文化の発展が幕府政治に影響を与えたことを知る。
□天保の改革について時代背景をもとに、評価することができる。
□水野忠邦がどのような理由があり、天保の改革を行ったか説明できる。
〇江戸幕府の政治改革が行われた理由や時代背景について主体的に追求し、解決しようとしている。 A・B・C A・B・C A・B・C ~成果と課題~
左は佐賀市の実践である。佐賀市では単元のデザインシートの中に評価規準を作成している事例があった。公正な評価を行うためには明確な規準を設定しておく必要がある。しかし、作成に伴う教師の負担感もあり、評価に関しても実践を蓄積し、誰もが取り組みやすい環境を整える必要性を感じた。
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