令和2年度 3学期始業式 校長訓話(令和3年1月12日(火))
入力日
2021年1月12日
内容
みなさん、新しい年が始まってもう12日めですが、皆さんと会うのは、今年初めてですね。あらためまして、新年あけましておめでとうございます。
先週末は、大雪により、休校となりました。コロナ感染や台風、そして今回の大雪と、いろいろなことに対して、落ち着いてしっかりと対応できるようになってきたのではないでしょうか。
では、本日を新たな節目、区切りとして、新しい学期を始めたいと思います。
さて、新しい年を迎えて、皆さんもそれぞれ、気持ちを新たにし、目標を考えたことだろうと思います。今年はぜひ、それを実現させることができるよう、精いっぱい努力してください。
ところで、今年は丑年ですね。丑が十二支(子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥)の順番が決まった話を聞いたことがありますか。丑はなぜ2番目になったのでしょう。
実は、干支の順番を決めるレースがあって、丑は朝早くからスタートし、断トツで一番にゴールしようとしたのですが、あいにく、ねずみの作戦に引っ掛かって、2番になってしまいました。とはいえ、丑は周りに影響されず、一歩一歩着実に歩みを進めたところがえらいですね。
このように干支が動物を表すというのはよく知られているのですが、実はもともと、十二支は、中国の殷王朝(紀元前17世紀頃~紀元前11世紀頃)で考えられた暦と言われています。子、丑、寅…の順番は、実は、植物が循環する様子を表しているのです。丑は十二支の2番目で、子の年に蒔いた種子が「芽を出して成長する」という時期なのです。
今日は詳しく話しませんが、丑という漢字もそういう意味の成り立ちを持っている字です。
こうした、「十二支の動物レース」や「植物の循環する話」からも分かるように、丑年は「先を急がず、目の前のことを着実に進めることが芽を出すこと、つまり将来の成功につながっていく」年というわけです。
さて、冒頭でも触れましたが、皆さんは新年に当たってどんな誓い、どんな目標を立てましたか。あるいはどんなことを考え、どんな思いを巡らせましたか。
皆さんが思い描いたその目標。その目標を実現させるためには、何より、まず一歩踏み出すことが大事です。そして、さらに、二歩、三歩と歩み続けなければなりません。
ところで、歌人の俵万智さんを知っていますか。自慢じゃないですけど、いや自慢なんですけど、これ俵さんのサイン本、僕に書いてもらったんですよね。(俵万智『考える短歌』新潮新書を提示。)
それはさておき、その俵万智さんの著作に『りんごの涙』(文芸春秋社)という本があります。その中に書かれているのですが、俵さんは、ある作曲家のピアノ演奏を聴いて、自分もピアノが弾けたらなあと思ったそうです。ピアノを習ったことがある人なら、経験をしたことがあるかもしれませんが、バイエルとか、初めは単調な教則本を練習するらしいですね。
俵さんは、幼い日に、ピアノの稽古に苦しみますが、結局はものにならなかった。ところが、単調な練習に泣かされながらも、それをものにしていく人もいる。皆さんの中にも、頑張って今でもピアノを続けている、なんていう人はいるのではないでしょうか。では、その差は何なのでしょうか。
俵さんは、それを「初めの一歩に続いて、二歩、三歩、四歩と歩み続けることにある」と言っています。
よくはじめの一歩が大事だと言います。何かをきっかけに、それをやり始めるのには、それなりの覚悟がいります。
そのきっかけがたとえ偶然だったにせよ、親や先生、友達に促されたものだったにせよ、よし頑張ろうと一歩めを踏み出す決意がいるわけです。
しかし、それと同時に、この先どうなるのか、このやり方でいいのか、本当に自分に続けられるのだろうかという不安もついてまわります。
つまり、最初の一歩は「えい、やあ」とちょっとした勇気があれば踏み出せるのですが、その次の二歩め、三歩めは、自分で考え、自分で判断し、自分の気持ちで歩みを進めていかなければならないのです。
実は、そのようにして、自分で考え、自分で判断しながら、私たちは自分の力や自分の生き方というものを、少しずつ作り上げていっているのです。
もちろん、俵万智さんは、ピアノはだめだったけれど、短歌という道で踏み出したはじめの一歩を、二歩め、三歩めと歩み続けておられます。
みなさんもいろんな思いをもって踏み出した令和3年の「はじめの一歩」があると思います。
その一歩を、このあとどのように歩み続けるか、しっかりと自分の頭で考え、二歩、三歩、四歩と、自分の足で、自分の意志で歩み続けてください。
大切なことは、たいてい、めんどうくさいものです。ですが、今年は丑年ですから、「丑」のように、ゆっくりでもいいから、しっかりと歩みを進めて、自分が蒔いた種が芽を出す年にしていきましょう。
以上、新しい年、新しい学期を迎えるにあたっての私からの話とします。今年もよろしくお願いします。
校長 下村昌弘
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