卒業式をおこないました。
入力日
2021年3月3日
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2021年3月1日(月)に令和2年度第73回卒業証書授与式をおこないました。
学校長式辞
梅の香漂う春の訪れを感じるこの佳き日に、佐賀県立三養基高等学校 第73回 卒業証書授与式を挙行できますことは、本校教職員一同にとりまして、この上なく大きな喜びです。
これまでの弛みない努力が実り、今、本校を巣立とうとしている196名の生徒の皆さん、卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様におかれましては、日々愛情を注がれたお子様の今日の姿に感慨も一入のことと拝察し、心よりお祝い申し上げます。加えて、感染症対策のため本日もご協力を頂きますことにお礼申し上げます。
さて、卒業生の皆さんのこの一年間は、長らく誰も経験したことのない、未曽有と言ってもよいほどのものでした。昨年3月の一斉休校に始まり、吹奏楽部定期演奏会の中止、男女とも出場が決まっていた全国高等学校剣道選抜大会の中止、ゴールデンウィークを跨ぐ再度の一斉休校。その後、時差通学での学校再開。その学校再開時には県高校総体の中止が既に決まっており、何とか生徒諸君の活躍の場面をという先生方の思いを集めて、運動部活動 成果発表会を開催しました。そして、夏の高校野球大会、吹奏楽大会も中止され、さらに全国高等学校総合文化祭もWeb開催となるなど、数多くの分野・部門で大会や発表会が行えない中、皆さんは高校生活最後の年を過ごしてきました。目標を定めて一心に取り組んでいた皆さんにとっては、とてもつらい経験であったことと思います。
部活動以外でも、常に感染症対策を考えた振る舞いを強いられ、心の伸びやかさが蝕まれていくような一年でした。
そんな不自由さや悔しさがあった中でも、進路実現に向けての弛まぬ取組と、クラスマッチや養基祭などの折々に見せてくれた溌溂とした姿。はじける笑顔。 三高生の清々しさと躍動は変わらずここにあった。先生方がそれを支え続けてくれた。そのことは大変嬉しいことだったと、今振り返っています。創立100周年を共に祝った今年、生徒、先生方みんなが101年目の三養基高校を作ってきました。これからも歴史を刻んでいく三養基高校の卒業生として、後輩たちの発展を見守りながら、皆さんが確かな歩みを進めていかれるよう願っています。
皆さんの卒業に当たって、二つのことを伝えたいと思います。
一つ目は、どんな人に対しても、言葉を尽くして真摯に誠実に向き合う人であり続けてほしいということです。
今、私たちの周りには、特にコンピュータネットワークの世界には、とげとげしく直接的な言葉や、論理を省いて決めつけた言葉、感情に任せて安易に批判するだけの言葉などが溢れています。人の思考や行動は道具に左右されるものなのでしょう。短く分かり易いフレーズが大きな反響を呼び、短絡的な断定がはびこっているようにも見えます。何より、実社会では、ごまかしや責任逃れな言動の手本に事欠かない状況があります。
しかし、本来求められるのは、相手を尊重し、自分と異なる立場にも配慮しながら、筋を通した丁寧な言葉を紡ぎ、誠実に向き合うことで、互いが折り合える着地点や、より良い着地点を見つけていくことです。そのような態度は、誰もが住みやすい社会を作っていくうえで大切なことであり、それが私たちに求められるコミュニケーションだと思います。
もちろん、批評や激論を否定するものではありません。互いのものの見方・考え方の、どこがどう違うのか、現状どこが折り合えないのかを率直に、相手を尊重しながら提示し合うことは、必ず互いのプラスとなります。当面意見が一致しなくても、互いの違いが分かり合えたのなら、それは決裂ではないでしょう。そこからまた次の地点に向かって関係性を保っていくことが必要です。卒業生の皆さんには、これからさまざまな機会に、そのようなコミュニケーションの経験を積んでいってほしいと思います。周囲とのコミュニケーションをとおして、自分を成長させ、自分がもっているものを発揮できることを願っています。
二つ目は、自分の持っている可能性を信じ、尻込みせずにさまざまなことにチャレンジしてほしいということです。
二年ほど前の調査で、日本の若者と、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等の諸外国の若者の意識を比較したものがあります。その調査において、日本と諸外国の若者で、回答に違いが目立った項目は、「自分自身に満足しているか」という問いでした。満足していない と答えた若者の割合は、諸外国では30%に満たないのに対して、日本では65%でした。
65%が自分自身に満足していないという、この調査結果に対しては、日本では自分に厳しい若者が多いのだ、自分に厳しいから自分に満足していないと答えたのだという見方があるかもしれません。また、謙虚さを重んじる私たちの文化が回答に影響したのだということもあるかもしれません。しかし、「自分自身に満足していない」と答えた日本の若者には、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができない」「うまくいくかわからないことに意欲的に取り組めない」と答えた人が多いという結果も示されているのです。そこからはなにか、伝えることや、やってみることに尻込みしながら、そんな自分に満足できずにいるという姿が感じられるように思います。
私たちも、「他者との軋轢を避けたい」とか、「きちんとやらなければ」とか、「失敗しないように」とか、上手にやることに縛られ過ぎてはいないでしょうか。尻込みしすぎてはいないでしょうか。現代そしてこれからの時代は、不確実性・不透明性が最大化した時代です。これからは、チャレンジして失敗することよりも、行動や変化を避けることのほうがリスクであり、むしろ失敗から学ぶこと、再チャレンジする力を高めていくことが大切だと言われます。私たちはもっと気兼ねなく、新しい方法や新しい分野にチャレンジしていってよいのではないでしょうか。是非、若い皆さんには多様な経験から柔軟に学ぶことを大切にしてほしいし、チャレンジする自分に胸を張って進んでほしいと思います。
以上、皆さんの卒業に当たって二つのことをお伝えしました。「どんな人に対しても、言葉を尽くして真摯に誠実に」、そして「自分の可能性を信じてさまざまなことにチャレンジを」。
結びに入りましょう。皆さんは、人生の中で生命が最も美しく輝くその時期をこの三養基高校で共に過ごしました。それはかけがえのない時間であり、将来にわたる自分の芯を作る特別な時期でした。その特別な時期に立ち会えたことをとてもありがたく思います。この高校生活を、充実していた、楽しんだと心から言える人もいれば、何かうまくいかないことを抱き続けた日々だったという人もいることでしょう。それはなにも優劣や勝ち負けではありませんし、この先に選択可能な未来が大きく開かれているということ、は皆さんに共通することです。どうか、ここでの経験を咀嚼し、必ず次の成長につながるものとしてください。皆さんが、自分の夢や志を大切に育てて、惰性に流れることなく、自らの人生を充実したものとしていってくれることを、心から願っています。
それでは、本校の教育活動への多大なる御協力を頂いた保護者の皆様に心より感謝申し上げるとともに、卒業生の皆さんの益々の発展を祈念し、学校長式辞といたします。
令和三年三月一日
佐賀県立三養基高等学校
校長 久保山文典